相続した空き家を売るには?手続きの流れ・税金・注意点をわかりやすく解説
相続した空き家を売るには?手続きの流れ・税金・注意点をわかりやすく解説
「親が亡くなり、実家を相続したが誰も住む予定がない」「空き家になっているが、どう処分すればいいかわからない」——そんな悩みを抱えている方は多いのではないでしょうか。
相続した空き家をそのまま放置しておくと、固定資産税の負担が続くうえ、建物の劣化や近隣トラブルのリスクも高まります。適切なタイミングで売却を検討することが、長い目で見ると家族全体の利益につながります。
この記事では、相続した空き家を売却するための基本的な流れ、かかる費用や税金、利用できる税制上の優遇制度、そして売却をスムーズに進めるためのポイントを詳しく解説します。「何から始めればいいのか」という方もぜひ最後までお読みください。
第1章 相続した空き家を放置するリスク
固定資産税・維持費の負担が続く
空き家を所有している間は、誰も住んでいなくても毎年固定資産税と都市計画税が課税されます。一般的な住宅用地には「住宅用地の特例」が適用され、固定資産税が最大6分の1、都市計画税が最大3分の1に軽減されていますが、自治体から「特定空き家」や「管理不全空き家」に指定されると、この特例が解除されて税負担が大幅に増加します。
「特定空き家」に指定されるのは、倒壊のおそれがある、衛生上有害な状態にある、景観を著しく損なっているといった状態の建物です。放置を続けると最終的には行政代執行による強制解体の可能性もあり、その費用は所有者に請求されます。
固定資産税以外にも、水道・電気の基本料金、年1〜2回の草刈りや清掃、火災保険料などの維持管理費が積み重なります。「とりあえず置いておこう」という判断が、年間数十万円単位のコストを生んでいるケースも珍しくありません。
建物の老朽化と近隣トラブル
人が住まなくなった家は急速に傷みます。換気が行われないことで室内に湿気がこもり、カビや木材の腐食が進行します。屋根や外壁の補修を怠ると、台風などの際に外壁材・屋根材が飛散し、隣家に損害を与えるリスクもあります。万が一第三者に損害を与えた場合、所有者は損害賠償責任を問われる可能性があります。
「空き家等対策の推進に関する特別措置法」(空き家特措法)の改正により、管理不全な空き家への行政指導・勧告が強化されています。近年は自治体の取り組みも積極化しており、適切な管理が求められる状況です。問題が複雑になる前に、早期に対応策を検討することが重要です。
相続人間のトラブルに発展することも
相続登記や遺産分割協議が長期間放置されると、その間に相続人がさらに亡くなる「数次相続」が発生し、権利関係がより複雑になります。関係者が増えるほど全員の同意を取り付けることが難しくなり、最終的には裁判所による調停・審判が必要になるケースもあります。
「もめたくないから先延ばしにしている」という方ほど、時間の経過とともに事態が深刻化しやすい傾向があります。早めに家族・相続人間で話し合いの場を設けることが、結果的に全員の負担を減らすことにつながります。
第2章 売却前に確認すること——相続手続きと名義の整理
不動産を売却するためには、まず「売れる状態」に整える必要があります。相続した空き家の場合、真っ先に確認すべきことが「名義」の問題です。不動産の名義が亡くなった方のままでは、売買契約を結ぶことはできません。
相続登記(名義変更)は義務化されています
民法・不動産登記法の改正により、不動産の相続登記が義務化されました。相続を知った日から3年以内に相続登記を行わないと、10万円以下の過料(行政上の罰則)が科される可能性があります。
登記が完了していない場合、売却はできません。また、相続登記には戸籍謄本の収集(被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍)など手間のかかる書類収集が必要です。司法書士に依頼すれば、書類の準備から登記申請まで一括してサポートしてもらえます。費用の目安は5〜15万円程度(物件の数や複雑さによって変わります)です。
遺産分割協議書の作成
相続人が複数いる場合、誰がその不動産を取得するかを話し合い、「遺産分割協議書」を作成する必要があります。協議書には相続人全員の実印と印鑑証明書が必要です。
協議がまとまっていない段階では、単独で売却手続きを進めることはできません。また、協議書の内容に不備があると後から相続人間でトラブルになることがあります。不安な場合は弁護士や司法書士に内容を確認してもらうことをおすすめします。
なお、「法定相続分通りに共有登記」してから売却するという方法もありますが、共有者全員の同意がないと売却できないため、後々の手続きが複雑になりやすいです。できれば協議でひとりの名義に集約してから売却することをお勧めします。
物件の状態・境界の確認
売却前には、物件の状態確認も重要です。建物に雨漏り・シロアリ・基礎のひび割れなどの瑕疵(かし)がある場合、後から買主とのトラブルになることがあります。売主として知っていることは事前に開示する義務(説明義務)があり、隠して売却すると損害賠償を求められる可能性があります。
また、土地の境界が不明確な場合は、隣地との境界確認作業(測量)が必要になることがあります。境界がはっきりしていないと売却が難航するため、早めに確認しておくと安心です。
第3章 相続した空き家を売る流れ——ステップごとに解説
名義の整理が済んだら、いよいよ売却の手続きに入ります。大きく分けると次のような流れになります。
- 不動産会社への相談・査定依頼
- 媒介契約の締結
- 売却活動・買主の募集
- 売買契約の締結
- 引渡し・残金決済
- 確定申告(必要な場合)
ステップ① 不動産会社への相談・査定
まず、地元の不動産会社に相談し、対象物件の価格査定を依頼します。査定には「机上査定(書類・データだけで算出)」と「訪問査定(現地を確認して算出)」の2種類があります。空き家の場合は建物の状態が価格に大きく影響するため、訪問査定を受けることを強くおすすめします。
査定額はあくまで「売れそうな価格の目安」であり、実際の売却価格は市場の需要や買主との交渉によって変わります。複数社に査定を依頼して比較することも有効です。なお、査定自体は無料で行ってもらえます。
ステップ② 媒介契約の締結
売却を依頼する不動産会社が決まったら、「媒介契約」を結びます。契約の種類は主に3つです。
一般媒介契約は複数の不動産会社に同時に依頼できます。広く買主を探せる反面、各社の力が入りにくい場合もあります。専任媒介契約は1社のみへの依頼で、自分で見つけた買主との直接取引は可能です。不動産会社には2週間に1回以上の活動報告義務があります。専属専任媒介契約も1社のみへの依頼ですが、自分で見つけた買主との直接取引も不可となります。不動産会社には1週間に1回以上の活動報告義務があります。
売却を急いでいる場合や、物件に特徴があってターゲットが絞られる場合は専任系の契約が有効なことも多いです。担当者とよく相談しながら状況に合った契約形態を選びましょう。
ステップ③ 売却活動・買主の募集
媒介契約を結んだ後は、不動産会社が不動産ポータルサイトへの掲載やチラシ・ダイレクトメールなどを通じた売却活動を行います。内見希望者が現れた際の立会いや鍵の管理なども不動産会社が対応してくれます。
空き家は物件によって売却にかかる期間が大きく異なります。立地や価格設定が適切であれば数週間〜数ヶ月で成約することも多いですが、郊外や築古物件の場合は時間がかかることもあります。担当者と定期的にコミュニケーションを取り、市場の反応に応じて価格設定を見直すことも大切です。
ステップ④ 売買契約の締結
買主が見つかり価格・条件に合意できたら「売買契約」を締結します。契約書には物件の状態(告知事項)の記載が含まれており、引渡し時期や手付金の額なども明記されます。契約時に買主から手付金(売買価格の5〜10%程度が一般的)を受け取ります。
売買契約後にやむを得ない理由で売主側から契約を解除する場合、受け取った手付金の2倍を買主に支払う必要があります。契約は慎重に進めましょう。
ステップ⑤ 引渡し・残金決済
売買契約から概ね1〜2か月後に「引渡し・残金決済」を行います。売却代金の残額を受け取ると同時に、物件の鍵を買主に引き渡します。このとき司法書士が同席して所有権移転登記の手続きも行われます。
空き家の場合、引渡し前に残置物(家具・家電・日用品など)をすべて撤去しておく必要があります。大量の残置物がある場合は不用品回収業者への依頼が必要となり、費用も発生します。早めに動いておくことをおすすめします。
第4章 相続した空き家の売却にかかる費用
売却時にはさまざまな費用が発生します。事前に把握しておくことで、手取り額の見通しが立てやすくなります。
仲介手数料
不動産会社に支払う仲介手数料は、宅地建物取引業法により上限額が定められています。売却価格が400万円を超える場合の上限は「売却価格×3%+6万円(税別)」です。例えば2,000万円で売却した場合の上限は66万円(税別)となります。実際には上限額で請求されることが多いため、事前に確認しておきましょう。
印紙税
不動産売買契約書には収入印紙の貼付が必要です。売買金額に応じて税額が変わります。1,000万円超5,000万円以下の場合は1万円、5,000万円超1億円以下の場合は3万円が目安です(軽減措置適用後)。
登録免許税(抵当権抹消登記)
売却する物件に住宅ローンが残っている場合、引渡しまでにローンを完済して「抵当権抹消登記」を行う必要があります。登録免許税は不動産1件につき1,000円で、司法書士への報酬も加算されます。
解体費用(更地渡しの場合)
老朽化した建物を解体してから「更地」として売却するケースもあります。木造一戸建て(床面積約100㎡)の場合、100〜200万円程度が相場とされています。アスベスト含有建材がある場合はさらに費用が上乗せされることがあります。
ただし、建物を解体して更地にすると「住宅用地の特例」が適用されなくなり固定資産税が増加します。売却のタイミングと解体のタイミングは、税負担も考慮したうえで慎重に検討してください。
その他の費用
残置物撤去費用、測量費用(境界が不明な場合)、ハウスクリーニング代などが発生する場合があります。売却計画を立てる際は、これらも含めて総費用を把握しておくことが重要です。
第5章 相続した空き家に関わる税金——譲渡所得税と控除制度
不動産を売却して利益(譲渡所得)が出た場合、所得税と住民税が課税されます。相続した不動産には独自の計算方法や特例があるため、正確に把握しておくことが大切です。
譲渡所得の計算方法
譲渡所得 = 売却価格 - (取得費 + 譲渡費用)
「取得費」とは、もともとその不動産を取得したときにかかった費用(購入価格+購入時の諸費用)です。相続した場合、亡くなった方(被相続人)が取得したときの価格を引き継ぎます。
「譲渡費用」とは、売却にかかった費用(仲介手数料・解体費用など)です。取得費と譲渡費用を合わせた額が売却価格を下回る場合に、差額が「譲渡所得」として課税対象になります。
購入時の価格が不明な場合は、「売却価格の5%」を取得費とみなす「概算取得費」を使うことができます。ただし実際の取得費がわかる場合はその方が有利なことが多いため、古い売買契約書や領収書を探してみることをおすすめします。
所有期間による税率の違い
売却した年の1月1日時点で、その不動産を所有していた期間が5年を超える場合は「長期譲渡所得」として税率が低くなります。
短期譲渡所得(所有期間5年以下)は所得税30.63%+住民税9%で合計約39.63%、長期譲渡所得(所有期間5年超)は所得税15.315%+住民税5%で合計約20.315%です。
相続した不動産は被相続人が取得した日から所有期間を計算するため、古い物件であれば多くの場合「長期」に該当します。
3,000万円の特別控除(空き家特例)
相続した空き家の売却には、「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除」(通称:空き家特例)が適用できる場合があります。一定の要件を満たすことで、譲渡所得から最大3,000万円を控除でき、税負担を大幅に減らすことができます。相続人が複数いる場合は、各相続人がそれぞれ特例を活用できる場合もあります。
主な適用要件は次のとおりです。昭和56年5月31日以前に建築された建物(旧耐震基準)であること、相続の開始直前まで被相続人が居住していたこと(老人ホームなど施設入居の場合も一定条件下で可)、相続開始から売却までの間に事業・居住・貸付に使用されていないこと、売却価格が1億円以下であること、建物を耐震改修するか更地にして売却すること(令和6年以降は買主が取り壊す場合も適用可)、そして相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ることが必要です。
要件が複雑なため、適用できるかどうかは必ず税理士や不動産会社に確認してください。特例の適用を受けるには翌年の確定申告が必要です。
取得費加算の特例
相続税を支払っている場合、相続した不動産の取得費に支払った相続税の一部を加算できる「取得費加算の特例」も設けられています。ただし空き家特例との併用はできないため、どちらが有利かは税理士に試算してもらうことをおすすめします。
第6章 売却以外の選択肢——売却が難しい場合の対応策
立地や建物の状態によっては、一般の売却市場で買主がなかなか見つからないこともあります。また「費用をかけずに早く手放したい」という場合もあるでしょう。そのような状況に合わせた選択肢を紹介します。
不動産会社による買取
仲介による売却ではなく、不動産会社が直接買い取るケースです。売却価格は市場価格より低くなる傾向がありますが(目安として市場価格の6〜8割程度)、買主を探す手間なく早期に現金化できます。建物の状態を問わず、古家付き・雨漏りあり・残置物ありの状態でも引き取ってもらえる点もメリットです。「とにかく早く手放したい」「遠方にいて対応が難しい」という方に特に向いています。
相続土地国庫帰属制度の活用
相続によって取得した土地は、一定の要件を満たせば国に引き渡すことができる「相続土地国庫帰属制度」が設けられています。売却益は得られませんが、管理の手間や固定資産税の負担から解放されます。ただし建物が建っている土地、土壌汚染が疑われる土地、境界が不明確な土地などは申請できません。また申請時に10年分の管理費用相当の「負担金」を納付する必要があります。詳細は法務局に相談してみましょう。
自治体への寄附・空き家バンクの活用
自治体によっては、一定の条件を満たした空き家や土地の寄附を受け付けているところがあります。また、地方自治体が運営する「空き家バンク」に登録することで、移住希望者やリノベーション目的の購入者と出会える可能性が広がります。愛知県内の各市町村でも空き家バンクの整備が進んでおり、岡崎市・西尾市・豊田市でも活用できます。
賃貸として活用する
すぐに売却しないが放置もしたくない場合、一時的に賃貸に出す方法もあります。家賃収入によって維持費の一部を賄いながら売却のタイミングを見計らうことができます。ただし賃貸に出すと空き家特例の適用が難しくなる点には注意が必要です。売却を視野に入れているなら、賃貸活用前に税理士に相談することをおすすめします。
第7章 相続した空き家をスムーズに売るための3つのポイント
ポイント① できるだけ早く動く
相続発生後から時間が経てば経つほど、建物の劣化が進み、相続人間の意思疎通が難しくなる場合があります。また、空き家特例には期限があるため、放置すると税制優遇の機会を逃すことになりかねません。
「まだ気持ちの整理がついていない」という方も多いと思います。しかし、不動産会社への相談や査定依頼は無料で行えるため、売却を最終決断する前の「情報収集」として一歩踏み出すだけでも状況が整理されます。
ポイント② 地元の不動産市場に詳しい会社に相談する
空き家の売却は、物件の状態や周辺の需要によって戦略が大きく異なります。その地域の市場を熟知した不動産会社に相談することで、適正価格の設定や売却方法の選択が的確になります。
愛知県の岡崎市・西尾市・豊田市を中心に不動産売却のご相談を承っているエステート・ラボでは、地域の市場動向をふまえた丁寧なアドバイスを提供しています。相続した空き家の処分をどうしたらよいかわからないという段階からでも、どうぞお気軽にご相談ください。
ポイント③ 税理士・司法書士と連携する
空き家の売却は、相続登記・遺産分割・譲渡所得税・特別控除の申告など、複数の専門分野が絡み合います。不動産会社だけでなく、税理士・司法書士といった専門家とも連携して進めることで、手続きの漏れや税務上のミスを防ぐことができます。信頼できる不動産会社であれば、必要に応じて税理士・司法書士を紹介してもらえることも多いです。
まとめ
相続した空き家の売却は、相続登記・遺産分割・税金の確認・売却活動と、多くのステップを踏む必要があります。特に空き家特例の適用期限があることから、時間的な余裕がないケースもあります。
この記事でお伝えしたポイントをまとめます。放置すると固定資産税・維持費・老朽化リスクが積み重なります。売却前には相続登記(名義変更)と遺産分割協議書の整備が必須です。売却益には譲渡所得税がかかりますが、空き家特例で最大3,000万円控除できる可能性があります。通常の売却が難しい場合は、買取・国庫帰属制度・空き家バンクも選択肢となります。そして地域を熟知した不動産会社・税理士・司法書士と連携して進めることが大切です。
「何から始めればいいかわからない」という方も、まずは一歩踏み出して専門家に相談することが解決への近道です。愛知県内(岡崎・西尾・豊田エリア)での空き家売却のご相談は、ぜひエステート・ラボへお気軽にお問い合わせください。